点検報告書や見積書に出てくる劣化症状・専門用語を、「どんな状態か/主な原因/放置するとどうなるか/調べ方・補修方法」の4つの視点でくわしく解説します。気になる症状から読み進めてください。
どんな状態?コンクリートやモルタル、塗膜の表面に生じる線状の割れです。髪の毛のように細く浅いものは「ヘアークラック」と呼ばれ、ただちに構造へ影響しないこともありますが、幅が広く深さのあるものは雨水が浸入しやすく、補修が必要なサインとされます。
主な原因乾燥収縮、気温差による膨張・収縮の繰り返し、地震や不同沈下による外力、内部鉄筋の腐食による膨張などが挙げられます。
放置すると割れ目から雨水や二酸化炭素が浸入し、鉄筋の発錆や中性化を早めます。やがて爆裂・漏水へと進行することがあります。
調べ方・補修クラックスケールで幅を測定して評価します。微細なものは塗膜(フィラー)で被覆、幅の大きいものはUカットシール充填やエポキシ樹脂の低圧注入で内部まで補修します。
どんな状態?内部の鉄筋が錆びて体積膨張し、コンクリートを内側から押し割って剥落させた状態です。鉄筋が露出していることもあります。
主な原因ひび割れやかぶり厚さ不足からの雨水浸入、中性化の進行による鉄筋腐食が主因です。
放置するとコンクリート片の落下事故につながるほか、断面の欠損が進むと躯体そのものの強度低下を招きます。
調べ方・補修打診で浮きの範囲を確認します。脆弱部をはつり取り、鉄筋の錆を除去して防錆処理を施したうえで、断面修復材(ポリマーセメントモルタル等)で復旧します。
どんな状態?ひび割れや目地から浸み出した水分とともにコンクリート中の成分が表面に運ばれ、白く結晶化して固まる現象です。「鼻たれ」と呼ばれることもあります。
主な原因内部への水の浸入と、その水の出口があること。すなわち、ひび割れ・打継ぎ部・防水不良など、水みちが存在するサインです。
放置すると白華そのものより、その奥で進む漏水・劣化が問題です。美観の低下に加え、内部の鉄筋腐食が進んでいる可能性があります。
調べ方・補修白華の発生位置から水の浸入経路を推定します。表面の除去だけでなく、ひび割れ補修・シーリング・防水など、水みちを断つ根本対策が必要です。
どんな状態?外壁や鉄部などの塗膜が紫外線や風雨で劣化し、表面が白い粉状になる現象です。手で触れると白い粉が付きます。
主な原因塗料の樹脂成分が紫外線で分解され、顔料が表面に粉として残るために起こります。塗装後の経年で必ず進行します。
放置すると塗膜の防水・保護機能が失われ、下地への水の浸入やカビ・藻の発生、さらなる塗膜劣化につながります。塗替え時期の目安です。
調べ方・補修手で触れて粉の付着を確認します。高圧洗浄で粉やカビを落とし、下地を整えたうえで外壁や鉄部の塗装(塗替え)を行います。
どんな状態?下地とタイル(または下地モルタル)の間に隙間が生じ、密着が失われた状態です。進行すると剥がれ落ちます。
主な原因接着力の経年低下、温度変化による伸縮差、下地のひび割れや雨水浸入などが重なって生じます。
放置するとタイルの落下は通行人への重大事故につながりかねません。建築基準法に基づく定期報告(全面打診等)の対象でもあります。
調べ方・補修打診や赤外線調査で浮き範囲を特定します。部分的な浮きは樹脂注入(アンカーピンニング)で固定、剥落部は張替えで補修します。
どんな状態?外壁の目地やサッシまわりに充填されたゴム状の防水材が、やせ・ひび割れ・破断・剥離する劣化です。
主な原因紫外線や温度変化による硬化・収縮、可塑剤の流出など。一般に7〜10年前後で打替えの時期を迎えます。
放置すると目地は雨水浸入の入口になりやすく、シーリング切れは漏水や内部劣化の直接の原因になります。
調べ方・補修触診・目視で硬化や破断を確認します。既存材を撤去して新たに充填する「打替え」が基本です。
どんな状態?手すり・鉄扉・階段・面格子などの鉄部が酸化して錆びた状態です。赤錆が広がり、塗膜の膨れを伴うこともあります。
主な原因塗膜の劣化・傷からの水分・酸素の侵入。海に近い地域では塩害でより早く進行します。
放置すると断面が痩せて穴あき・強度低下を招き、手すりのぐらつきなど安全上の問題に直結します。
調べ方・補修錆の程度を確認し、ケレン(錆落とし)で素地を整え、錆止め塗料を塗ったうえで上塗り塗装を行います。腐食が著しい場合は部材交換します。
どんな状態?屋上・バルコニー及びベランダ・廊下などの防水層が、浮き・膨れ・ひび割れ・破れを起こした状態です。表面の保護塗装の色あせも劣化のサインです。
主な原因紫外線・熱・経年による防水材の劣化、下地に含まれた水分の蒸発による膨れ、排水不良による水たまりなど。
放置すると防水機能が切れると、下階への漏水やコンクリート内部の劣化を招きます。改修費用も大きくなりがちです。
調べ方・補修目視・含水調査で状態を確認します。既存防水の状態に応じて、ウレタン塗膜防水・シート防水などで改修。下地の補修と排水経路の見直しも行います。
どんな状態?屋上・バルコニー及びベランダ・外壁のひび割れやシーリング切れ、サッシまわりなどから、雨水が建物内部へ浸入する現象です。
主な原因防水層・シーリング・外壁の劣化が複合していることが多く、原因が一つとは限りません。給排水管からの漏水と混同されることもあります。
放置すると内装の汚損やカビ、断熱材の劣化に加え、躯体の鉄筋腐食を進めます。住戸間のトラブルの原因にもなります。
調べ方・補修雨の侵入口と室内に現れる箇所が離れていることも多く、散水試験や赤外線調査で経路を特定します。原因の特定こそが最重要で、当社の得意分野です。特定後、原因に応じた的確な補修を行います。
どんな状態?本来アルカリ性のコンクリートが、空気中の二酸化炭素や酸性雨と反応して表面から徐々に中性へと変化していく現象です。
主な原因経年による自然な反応で、すべてのコンクリートで進行します。空気中の二酸化炭素が主な要因ですが、硫黄酸化物・窒素酸化物を含む酸性雨も中性化を促す一因とされ、雨がかりの多い面では進みやすくなります。ひび割れや表面の劣化があるとさらに進行します。
放置すると中性化が鉄筋位置まで達すると、鉄筋を守るアルカリ環境が失われて錆びやすくなり、爆裂の原因になります。
調べ方・補修はつり面やコア採取にフェノールフタレイン溶液を噴霧し、変色しない範囲で中性化深さを測定します。表面被覆や再アルカリ化などで進行を抑えます。
どんな状態?かぶり厚さ(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)の不足や爆裂により、内部の鉄筋がむき出しになった状態です。
主な原因施工時のかぶり不足、ひび割れ・爆裂の進行、長期間の雨水浸入による腐食などです。
放置するとむき出しの鉄筋は錆の進行が速く、断面が痩せて構造的な耐力低下を招きます。早急な補修が必要です。
調べ方・補修錆の程度と範囲を確認します。錆を除去して防錆処理を施し、断面修復材でかぶりを復旧。必要に応じて補強筋を追加します。
どんな状態?外壁塗装の塗膜が部分的に浮き上がったり、剥がれ落ちたりする劣化です。
主な原因下地と塗膜の間に水分や空気が入り込むこと、下地処理の不良、塗膜自体の経年劣化などが原因です。
放置すると剥がれた部分から下地へ水が浸入し、劣化が一気に広がります。塗替え時期を過ぎているサインでもあります。
調べ方・補修付着状態を確認し、浮き・剥がれ部をケレンで除去。下地を補修・調整したうえで、適切な下塗りから塗り重ねて再塗装します。
どんな状態?庇・窓まわり・笠木などから流れた雨水によって、外壁に黒い筋状の汚れが付着する現象です。
主な原因大気中の塵や排気が雨水とともに外壁を伝って堆積するため。水切り形状や塗膜の劣化により付きやすくなります。
放置すると美観の低下が主ですが、塗膜の防汚・防水性能の低下を示すこともあり、カビ・藻の温床にもなります。
調べ方・補修高圧洗浄で汚れを除去します。再発しやすい場合は、防汚性・低汚染性の高い塗料での塗替えや、水切りの改善を検討します。
どんな状態?コンクリート表面に砂利が露出し、すき間(空隙)ができてしまった不良部分です。見た目が豆板に似ることからこう呼ばれます。
主な原因打設時の締固め不足、材料分離、型枠のすき間からのモルタル漏れなど、施工段階で生じます。
放置するとすき間に水が入り込みやすく、強度・耐久性・水密性が低下します。鉄筋腐食の起点にもなります。
調べ方・補修範囲と深さを確認し、脆弱部をはつり取って清掃のうえ、無収縮モルタルや断面修復材で充填・復旧します。
どんな状態?コンクリートの打ち継ぎ部で、先に打った層と後から打った層がうまく一体化せず、線状の継ぎ目(弱点)となった状態です。
主な原因打ち重ね時間が空きすぎたことによる不連続。気温の高い時期や、打設計画の不備で生じやすくなります。
放置すると継ぎ目はひび割れや漏水の起点になりやすく、内部への水みちとなって鉄筋腐食を招きます。
調べ方・補修目視で継ぎ目を確認します。ひび割れに準じてUカットシール充填や樹脂注入を行い、水の浸入を遮断します。
どんな状態?日当たりや風通しの悪い面、湿気の多い面に発生する、緑色や黒色の汚れです。北面や水まわりに多く見られます。
主な原因水分・湿気と、塗膜の防汚・防カビ性能の低下が重なって発生します。チョーキングが進んだ面で繁殖しやすくなります。
放置すると美観の低下に加え、保持した水分が素地の劣化を早めます。アレルギーなど衛生面の懸念もあります。
調べ方・補修発生範囲を確認し、高圧洗浄や薬剤で除去します。再発防止には、防カビ・防藻性の高い塗料での塗替えが有効です。
どんな状態?屋上・バルコニー及びベランダの立上り上部を覆う笠木や、手すり・笠木の固定部に生じる、腐食・がたつき・シール切れなどの劣化です。
主な原因笠木のジョイント部や固定ビス部のシール劣化、金属部の錆、固定金物のゆるみなどです。
放置すると笠木内部への雨水浸入は、防水層の裏側からの漏水につながります。手すりのぐらつきは落下事故の危険もあります。
調べ方・補修シール状態・固定状態を点検します。シーリングの打替えや金物の増し締め・交換、笠木の更新などで、雨仕舞いと安全性を確保します。
※ 症状の進行度や最適な補修方法は、建物の構造・立地・経過年数により異なります。気になる症状があれば、現地調査のうえ最適な対応をご提案します。
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